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飲酒日記

スキー&スノーボード2004-2005

日常の詩吟

 友よ。

 問おう、

 ユビキタスの

 なんたるかを。


 それは、

 器に刻み付けられた凹凸が

 目を閉じていてもたちどころに

 シャンプーかリンスかを


 友よ。

 それはバリアフリー。
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# by tatsuki-s | 2005-01-12 20:29 | Anecdote/Pun(小噺・ネタ)

丘とベル

 カウベルの音が鳴ると、そこは天国なのだと思った。

 伯父の家は牧草地が広がる小高い丘のうえにあった。遠くに白くかすむ山々にいたるまで視界をさえぎるものひとつなかったので、丘の中央に立って周囲を見渡すと、巨大な緑の円盤に乗って飛んでいるような気がしたものだった。

 風の強い日には雲が速く流れ、円盤は急速に動いた。暖かくおだやかな日には、大海のなかに漂っているようだった。まだ幼い時分には、伯父の運転するがたがたした軽トラックの荷台に揺られながら町に買い物にゆくときなど、子供らしい想像力から、あの丘は長距離航海をする船のように停泊しているのだと考えてわくわくした。

 とある外出の折に私がそのことを口にすると、伯父は、そうだよ、だからうちには誰もこられないんだ、と少しおどけたように答えた。そして帰りには、早くしないと出てしまうぞなどと言ってうろたえる私を急かしては面白がった。

 市街地から周囲の森林を抜けて丘に近づくと、きまって遠くからカウベルの音が聞こえた。それを耳にするたび、ぶじに帰ってきたのだと思ってなぜかほっとするのだった。その音は、雨の日には鈍くくぐもって聞こえた。

§            §            §

 学校にあがるようになって、私は伯父の家から親元に移り、伯父とはいつのまにか音信不通になってしまった。

 10数年ぶりに訪れた町は、駅前のロータリーに面した本屋がパチンコ屋になっていたことを除けばさほどかわり映えもしなかった。ぼんやりと記憶に残っていた商店街は思ったよりもずっと小さくて、ろくに店もなかった。

 駅前で車を拾ってあいまいな記憶を頼りに伯父の家に向かったが、あの丘があったはずの場所は住宅地だった。タクシーの運転手に尋ねてみたが、そこはもうずっと以前から住宅地だと言った。車を降りて数時間かけてその周辺をうろついてみたが、いくらさがしても、丘も、森らしきものも見つからなかった。

 そういえば、私は牛の姿さえ見たことがなかった。

 あの音はいったいどこから聞こえていたのだろう。

 日も暮れてきたので、私は商店街の雑貨屋で小さなカウベルを見つけて買った。振るとかすかにちりちりと音がしたが、それはあの音に似ていなかった。
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# by tatsuki-s | 2004-12-24 17:41 | Anecdote/Pun(小噺・ネタ)


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